宮本しづえのかけ歩き

あかるくあたたかい県政へ

10日間の海外視察から無事帰国。福島の原発事故からヨーロッパの方が教訓を導き出し、安全が最優先と強調。事故の本家本元が教訓を引き出せずに川内原発再稼働容認とはあまりに対照的。しかし世界は日本のエネルギー政策、廃炉、除染の取り組みに注目している。

 7月7日から16日まで、スイス、ドイツ、オーストリアを訪問、原発廃炉に向けた取り組みや、中間貯蔵施設の視察、IAEA本部を訪れ福島の汚染水対策を初めてする事故収束作業と廃炉に向けた国連機関としての取り組みと支援の要請を行ってきました。

 スイスでは、ジュネーブ産業公社、政府の核安全監督局、エネルギー庁と懇談し、スイスのエネルギー政策について調査。スイスには5基の原発があり、世界で最も古い原発が存在、国内エネルギーの36%を原発に依存、新たに3基の原発の新設計画もありました。しかし、福島の原発事故が国民に大きなインパクトを与えており、それまでは国民の原発への受け止めは国民投票でも否定的ではなかったが、福島の事故を契機に世論が変化脱原発に舵を切り替え、2030年半ばにはすべての原発を閉鎖する方針。これは大きなチャレンジだが、福島のような事故が起きれば、スイスの3分の1の国民は住む場所が無くなってしまうと。

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 日本の原子力規制委員会に当たるENSIという政府から完全に独立した機関が、安全性のチェックをはじめとした業務を行っています。彼らが独立した機関であることが大事と強調していました。

 スイスの中でもジュネーブの市民は、原発の電力は使わないという進んだ考え方が40年前からあり、再生可能エネルギーを積極的に推進してきた歴史があります。

 産業公社は電気、ガス、上下水道、ゴミ処理など公共事業を幅広く行っているが、特にエネルギーは省エネ政策を進めると同時に、再生可能エネルギーの料金を高めに設定し、市民が料金で使いたいエネルギーを選択するシステムを導入、環境にやさしいエネルギーの供給をめざし先進的な取り組みが進められていました。

また、中間貯蔵施設も視察。東電の敷地内に入った時ほどではないものの、上着と靴と靴下、帽子をかぶり貯蔵施設に入りました。ここには高レベルの核廃棄物が貯蔵されており、安全管理対策は厳重になされていました。但し、最終処分場は未だに決定されておらず、国の大きな課題となっていました。

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写真は、スイスの中間貯蔵施設

ドイツでは、クライフスヴァルト 原発廃炉と中間貯蔵施設、ゴアレーベン中間貯蔵施設を視察しました。ドイツの田園地域はどこでも風力発電設備が目につきます。

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グライフスヴァルト原発は8基の原発計画があり、4基までは稼働、5、6号機は建設中、7、8号機は基礎工事中だったが全て廃止を決定。燃料を入れるばかりだった6号機内も見せてくれました。1から5号機は解体作業中で、解体されたものが貯蔵されている中間貯蔵施設も見ました。中間貯蔵と言っても中に入れるものは高レベル核廃棄物、できるだけ細かく裁断した施設残骸で、廃炉を進める上で無限の部品を間違いなくどこに何があるかが分かるシステム開発を含めて、まだどこでもやったことのない作業の連続。しかも人間ではできない作業でロボットによる遠隔作業の開発も必要だったことなど、一口に廃炉と言っても膨大な作業が求められると説明。福島の場合は燃料が溶け出しどこにあるかもわからない中での廃炉作業となるため、ここでの困難とは比較にならないだろうとの感想も述べていました。核廃棄物の処理を考える場合に、放射能の量で言えば99%は高レベル廃棄物、残る1%が中、低レベル廃棄物で、最も困難なのは高レベル廃棄物をいかに安全に処理できるかだと指摘、最終処分場は今もって決定していないと述べていました。ゴアレーベンの中間貯蔵施設も同様で、当初は最終処分場にしたい計画だったようだが、地層の問題などもっと安全な場所にすべきなどの意見が出て、中間貯蔵施設とされた経過が説明されました。ドイツも最終処分場をどこにしたらいいのか決められずにいるということです。

ゴアレーベン中間貯蔵施設のインフォメーションセンター長と最後に福島にどのような技術的に支援が可能と考えていますかと個人的に質問すると、顔を曇らせてなぜあのような事故が起きてしまったのかが重要な問題だと述べ、安全性がもっと重要視されていればいなければならなかったはずだと述べ、できることは協力したいと言ってくれました。

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写真は廃炉が進む原発とゴアレーベン中間貯蔵施設の全景

 最後に訪問したオーストリアIAEA本部で、最終処分をどうすべきと考えているかとの質問に、安全性が最優先されなければならないとしながら、現時点では地下処理が望ましいと考えられていると述べるにとどまり、これがベストの処理方法だとは言えません。福島の事故を踏まえた行動計画が作られ、更にこれから福島報告書が作成されて来年の総会に付される予定となっていることが明らかにされました。

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 私は、安倍政権が再稼働に突き進むために世界一安全な基準を作ったと述べていることについて、国際機関としてはどのように見ているのかと質問。どの国が一番安全などとは言えないとして、明快な回答は避けました。また、年間被ばく線量をめぐる問題でも、住民の安全と安心には大きな開きがあることを理解して対応してほしいと要望し他のに対して、大変難しい問題だと述べ、何よりも重要なことは、正確な情報が低起用されることだと強調しました。

今回の視察を通じて感じるのは、福島の事故収束、廃炉の作業は人類未踏の事業であり、その困難さは想像に絶するものだということです。廃炉の先進地から見ても困難が分かるだけに、兎に角福島には頑張ってほしいとの思いが強く伝わってきました。

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写真は街並みと市役所の大型スクリーンで夕方には様々なイベントが開催されています。 余りにきれいなウィーンの街並みに、見とれてしまいました。夜は音楽会にも行けて素敵な一夜も体験もできました。

 スイスもドイツも街なかで早朝から朝市が開かれ、新鮮な野菜や果物がたくさん並びます。

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 羽田空港に着いた途端に鹿児島県川内原発再稼働の審査が終了したとのニュースが流れ、ヨーロッパとの落差に愕然とする思いです。 今回の視察で学んだことを日本と福島の政策に活かしたいと思います。