宮本しづえのかけ歩き

あかるくあたたかい県政へ

15日、復興共同センターが原発汚染水の学習会。新たな科学的知見を踏まえ、求められるのは海洋環境を守る倫理観

 県復興共同センターが15日、福島医療生協の斎藤紀理事長を講師に原発汚染水問題の学習会を開きました。国と東電が来年には汚染水の海洋放出を行いたいとする下で、許さないための運動を進めるために企画されたものです。斉藤紀理事長の講演は3時間に及び、最新の研究者の科学的知見も紹介しながら、汚染水海洋放出がいかに問題かを丁寧に解説。問題の集中点は漁業者が反対していることだとして、本格操業準備に入った今でも漁獲量は17.5%に留まっていること、海洋汚染が懸念されること、国は原発復興が第一義的で漁業者は二の次にされていると指摘しました。

国も東電も科学でトリチウム安全論を振りまくが、あくまで人体に対してであり、環境に対してではないこと、IAEAが4月に暫定報告書を出したが、IAEAの役割はIAEAの基準で海洋放出を支持すること、漁業者の苦悩を世論から引き離すことだと糾弾しました。

 この間行われた流通業者へのアンケート調査で、消費者の50%は福島の魚貝類を購入しないとみていること、仕入業者では80%が購入しないだろうとみている結果が出ていることを紹介。漁業への影響は大きく決して国民と漁業者を分断させない運動が大事だと述べました。

 科学的知見で明らかにされつつある放射性物質の影響について、人体への影響に関する疫学調査は乏しいが、魚介類等の海洋生態系への影響に関する調査は長い歴史があると言います。最近の国際的権威がある科学誌に紹介されたいくつかの論文を示し、これらに共通することは、IRCPが示す影響が懸念されるトリチウムのレベル400から4000μ㏉/hよりもはるかに低い線量率で、かつ東電が示した0.3μ㏉/h以下でもカニ、イガイ幼虫のDNA切断等の障害が確認されていると紹介。人体に影響が出ないレベルでも海洋生態系は既に影響を受けており、環境を守る立場に立つのかどうかの倫理観、思想性が問われていると強調。また、汚染水はトリチウム以外の核種も問題で、トリチウムとは異なる動態を有すると言います。こうしたことを考慮するなら、汚染水は地上保管すべきと強調しました。